IoT(Internet of Things:モノのインターネット)の動向について、何の前提条件も置かずに理路整然と語ることは難しい。その言葉で表される事象があまりにも広いためだ。

 実際、この言葉の下、まるで違うトーンで動向が語られているのを見かけることが珍しくない。例えば、「IoTはRFID(無線ICタグ)技術の規格団体、Auto-IDラボの関係者が10年以上前に提唱したもので、既に大きな市場がある」ともされている。

 事実、IDCジャパンによれば2013年時点で国内でもおよそ10兆円規模のIoT関連市場があるという(プレスリリース)。その一方で、別な報道や解説では「IoTはまだビジネスになり始めたばかりだ」「これからの市場だ」と語られていたりもする。

 筆者がIT業界アナリストやウオッチャーにIoTをテーマにインタビューした内容を振り返っても、やはり識者によっても言葉の定義をどのくらいの広さで捉えるかは違いがあるように感じた(関連記事:「ビッグ」でなくていい、IoTの焦点は新ビジネスを生むことだ、関連記事:IoTに向け、実験予算の確保やITパートナーの見直しに着手すべき)。

 実のところ、調査会社が「IoT市場」の算定根拠について、どう定義しているのか詳細に説明した例もなかなか見当たらない。そうした事情もあってか、市場の金額を発表している米IDC/IDCジャパンのような市場調査会社は、まだ少ない。

 そこで本稿では状況を整理するため、IoTの方向性をまず2つに分類することにする。その2つとは「可視化IoT」と「自動化IoT」である。

「可視化IoT」は状況の見える化に役立てる

 まず「可視化IoT」をどういう意味で使うのか説明しよう。下記のような内容だと考えている。

  • 個々の機器や施設に、何らかの情報発信源(センサーと無線回線など)を取り付けるだけで何らかの状況把握の目的を達せる用途
  • 集めたデータについて手作業で何らかの分析を行うこともあるが、定常的に分析を行ってリアルタイムに自動で次のアクションを決定するような仕組みまでは想定しない