「新規事業の創出」。情報サービス産業協会が2014年3月に実施したユーザー企業へのアンケートの結果、ビジネス環境への変化に対応するための対策として、全体で3位(28.5%)、上場企業内で1位(39.6%)に挙げられたのが、この項目だ。

 日本の企業が、新たなサービスや事業を模索する動きは2015年も活発になるだろう。海外企業と比べてIT活用が遅れていると言われているものの、いまやサービスや事業の実現にITが欠かせない。経営層や事業部門、情報システム部、ITベンダーのエンジニアが一体となって取り組むべきテーマとなる。すべてのビジネスがデジタルになる“ビジネスのデジタル化”がじわじわ進むと予測される。

 だが従来のIT化と違い、シンプルな解は用意されていない。「FA(ファイナルアンサー)となるものが今はない」。昨年、あるIT大手ベンダーの幹部の方からこんな言葉を聞いた。以前はERP、CRM、SCMなど3文字英語でユーザーとITエンジニアが共通認識できたようなソリューションでSIが成り立ってきたが、今やそれが難しくなった。

 新たなITキーワードは喧伝されているものの、パッケージが流通するほどの共通認識はまだない。

 例えば、流通業がこぞって取り組んでいるオムニチャネル(あるいはO2O)。スマートフォン、Web技術、iBeaconなど各種コンシューマ系技術を組み合わせ、ITエンジニアやデザイナーのアイデア次第で各企業固有の解決策が形作られる。日経SYSTEMS 2014年5月号で紹介した渋谷パルコのシステムでは、フロア壁面に設置した6畳ほどのタッチパネルで約1000点の商品検索を可能にしたが、他社がそのまま真似して価値が出るものでもない。

 IoT(モノのインターネット)やビッグデータといったキーワードにしても、何を作るのか、何に役立つのかは一般に共通認識がない。ただ、自動車業界における次世代車載情報システム(IVIシステム)、製造業全般におけるIndustry 4.0、住宅業界におけるHEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)とサービスの融合など、各分野の新サービス/事業の裏でITの活用は確実に進むだろう。