第1回第2回で解説したように、戦略を確実に実行に結び付けるには「伝達率の問題」「変換の問題」「言語の問題」という三つのハードルを乗り越えなければなりません。

 そのためには、プロジェクトマネジャーが第4回で説明した「要求を引き出し、議論を深める力」「価値を設計する力」「不確実性に対処しながら、やり切る力」という三つの力をもって、戦略を現場の言葉に翻訳するための継続的なプロセスが必要となります。それが「マネジメントサイクル」です。

 マネジメントサイクルで最も有名なのは「PDCAサイクル」でしょう。「Plan(計画)- Do(実行)- Check(評価)- Action(改善)」のサイクルです。品質管理の父といわれるウィリアム・エドワーズ・デミング博士が提唱したことから「デミングサイクル」とも呼ばれます。

 マネジメントサイクルには他にも「PDC:Plan - Do - Check」や「PDS:Plan - Do - See」などがあります。いずれも「プランを立てて、実行して、評価する」という本質は同じです。

 ITの現場でプロジェクトに従事するに当たって、このマネジメントサイクルは非常に重要です。しかし、勘違いしてはならないのは、マネジメントサイクルのそれぞれのステップは“硬直”したものではないということです。筆者の経験上、非常に多くの人がこの点を誤解しています。

 PDCAサイクルでいえば、Plan(計画)したら、その通りに Do(実行)しなければならないわけではありません。Doの途中であっても、環境の変化や現場での気付きをフィードバックし、軌道修正を怠ってはならないのです。

 ところが、実際は「決まったことだから」「上が言っているから」と盲目的に実行したり、やっているように見せかけて現場では帳尻を合わせたりする状況が散見されます。