ここまで、せっかく練り上げた戦略が実行されない理由や、戦略を実行可能なものにするには「戦略」を「プロジェクト」「プロセス」「アクティビティ」と段階的に詳細化していく必要があることについて説明してきました。この詳細化のプロセスで最も重要な役割を果たすのが「プロジェクトマネジャー(PM)」です。
経営層から示された戦略や要求は、幹部層、管理職層を通じて、現場に伝えられます。この戦略や要求を「現場の言葉」に翻訳し、プロジェクトとして実行する役割を担うのがPMです。別の見方をすれば、経営層と現場の狭間に位置し、その橋渡しをする機会が最も多いのがPMであるといえます。企業の「実行力」の多くはPMが担っているのです。
ここでは、そうしたPMに求められる能力について考えてみましょう。PMに求められるのは、
- 要求を引き出し、議論を深める力
- 価値を設計する力
- 不確実性に対処しながら、やり切る力
と大きく三つあります(図1)。以下、順番に見ていきます。
PMに求められる能力1:「要求を引き出し、議論を深める力」
第2回で紹介したように、経営層と現場では「使っている言語」が異なっていることがよくあります。経営層が発する言葉と、それを現場が聞いて理解する意味が異なっていることが多いのです。
発想が優れている経営者ほど、順序立てて話すのではなく、重要なポイントだけを伝えて詳細に触れないというケースが多く、それを聞く方も意味が分からないまま「なるほど・・・(よく分からないけど)」となることが珍しくありません。