みなさん、こんにちは。hifive開発チームの下田です。2013年11月、アメリカのスミソニアン博物館は、所蔵品の3Dデータの公開を始めました。3Dデータは無償でダウンロードでき、3Dプリンターで印刷すれば文字通り“手にする”ことができます。また、ブラウザー上で自由に拡大・回転させながら鑑賞することも可能です(図1)。実は、このブラウザー上での表示には、HTML5の関連技術である「WebGL」が使われています。

図1●スミソニアン博物館が提供する3Dモデルブラウザー「Smithsonian X 3D」。3Dのモデルを自由に回転・拡大縮小できる
図1●スミソニアン博物館が提供する3Dモデルブラウザー「Smithsonian X 3D」。3Dのモデルを自由に回転・拡大縮小できる
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 従来、こうした高度なリアルタイム3DレンダリングをWebブラウザー上で行うことは難しく、(1)事前に動画にしておいたり、様々な角度から写真を撮って切り替えたりすることで疑似的に3D表現する、(2)3D表示のためのプラグインソフトを別途導入する――などの必要がありました。

 しかし、WebGLという標準化された技術の登場によって、リアルタイム3D描画がブラウザーの標準機能になりました。3Dゲームなどのエンターテインメント分野はもちろん、医療や教育、産業や流通分野でも活用が期待されています。

 本特集の最終回である今回は、まず前半でHTML5を中心としたWeb技術の広がりを事例ベースでいくつか紹介します。後半は、前回までの内容をおさらいしつつ、これからの技術動向をまとめ、Webの進歩とどのように向き合っていくべきかを考えてみたいと思います。

テレビからIoTまで、広がるWebの世界

 ここではいったん「業務システム」という枠から離れて、Web技術の広がりを示す例をいくつか見ていきましょう。まず一つめは、テレビへの適用例です。2013年9月、NHKが「ハイブリッドキャスト」と呼ぶサービスを開始しました。「通信と放送の融合」がクローズアップされる中、技術面におけるそうした融合の仕組みの一つがこのハイブリッドキャストです。