2014年は、広く使われているソフトウエアやプロトコルに、危険な脆弱性が相次いで見つかった1年だった。しかも、セキュリティベンダーなどのマーケティングの一環で、いくつかの脆弱性にはキャッチーな名前が付けられた(関連記事: 脆弱性に名前を付けるメリット)。OpenSSLの「Heartbleed」、bashの「ShellShock」、SSL 3.0の「POODLE」、USBの「BadUSB」などである。

 「OpenSSLで露見した脆弱性、『心臓出血』の影響はどこまで及ぶ」など、これらの脆弱性に関する記事はよく読まれた。中でも大ヒットになったのが、BadUSBとShellShockの危険性を記者が実際に体験した「記者は『BadUSB』を試してみた、そして凍りついた」「記者は『ShellShock』に触れてみた、そして震え上がった」だった。

 脆弱性に名前を付けるブームは今後も続くだろう。2000年から2005年ぐらいまでのウイルス(マルウエア)についても同様だったと記憶している。キャッチーなウイルス名を付けるとメディアに取り上げられやすくなるので、セキュリティベンダーは競って“クール”な名前を付けて公表した。

 キャッチーな名前を付けること自体は注意喚起に役立つし、利用者に説明しやすくなるので悪いことではないと思う。しかしその後、ベンダー各社は同じウイルスに対して異なる名前を付け始めた。“名付け親”になると、ウイルスを取り上げる際に自社名も紹介してもらえる可能性が高まるためだ。

 その結果、利用者の困難を招いた。当時、あるセキュリティベンダーに聞いた話では、「テレビで○○○と言っているウイルスが、おたくのWebページでは見当たらない。おたくのセキュリティソフトでは対応していないのか?」といった問い合わせがサポートセンターに相次いだという。そのベンダーではそのウイルスに別の名前を付けていたのだ。

 そして膨大な数のウイルスが日々出現するようになると、いちいち付けていられないし、付ける意味もなくなったので、ウイルスに名前を付けるブームは下火になった。脆弱性については、同じ轍(てつ)を踏まないことを祈る。

 もう一つ、2014年のセキュリティに関する大きな話題としては、内部犯行による情報漏洩事件が挙げられるだろう。特に、ベネッセコーポレーションで起こった顧客情報の漏洩事件では、漏洩人数は約4800万人、対策費は約200億円にも上り、社会に大きなインパクトを与えた(関連記事:ベネッセ事件容疑者はなぜスマホでデータを持ち出せたか、IT部門は設定の再点検を)。

2014年セキュリティ関連記事ランキング
(2014年1月1日~12月7日)
1位【記者の眼】記者は「BadUSB」を試してみた、そして凍りついた
2位【記者の眼】大規模障害から1年余り、あの企業が「その後」を語った
3位【News&Trend】IEに見つかった「ゼロデイ脆弱性」、“タイミング”と“誤解”で騒ぎ拡大
4位【記者の眼】記者は「ShellShock」に触れてみた、そして震え上がった
5位【News&Trend】ファームウエアを勝手に書き換える、USBの危険すぎる脆弱性「BadUSB」
6位【記者の眼】ショートカットに気をつけろ!進化する標的型攻撃の脅威
7位【記者の眼】脆弱性を突かれて、実家と自宅の250kmを一晩で往復した話
8位【ニュース】Windowsのパッチに不具合、PCが起動しなくなる恐れあり
9位【西本逸郎のIT社会サバイバル術】OpenSSLで露見した脆弱性、「心臓出血」の影響はどこまで及ぶ
10位【ニュース】「IEのゼロデイ脆弱性」を修正するパッチが緊急公開、Windows XPも対象
11位【ニュース】「対策を打つ前にやられた」、NTTデータが横浜銀行データ不正取得事件について釈明
12位【ニュース】ベネッセ事件容疑者はなぜスマホでデータを持ち出せたか、IT部門は設定の再点検を
13位【News&Trend】危なすぎるBashの脆弱性「Shellshock」、深刻な事態になる前に対策を
14位【ニュース】「GOM Player」によるウイルス感染、原因はアップデートサーバーへの不正アクセス
15位【News&Trend】危なすぎる数字だけのパスワード、JALとANAがユーザー認証を強化
16位【週末スペシャル】角川のWebサイト改ざん事件で明らかになった“ハッカーの狙いは日本人”
17位【ニュース】約500万件のGmailアドレスとパスワードが漏えい、流出元は別サイトか
18位【ニュース】IEの深刻なゼロデイ脆弱性、MSが「回避策まとめ」を公開
19位【記者の眼】15年超IT系記者のプライドがポッキリ折れた話
20位【ニュース】「セクシー画像」に気をつけろ!国内ユーザーを狙う詐欺アプリがGoogle Playに出現