「暗闇プロジェクト」ではリスクを見極め、必要なら即行動に移す姿勢が欠かせない。システムのモジュールを「人間関係」を基に分割するといった“非常識”な施策も大いに有効だ。

 この連載では、先の見えない「暗闇プロジェクト」でトラブルに陥らないための実践的なヒントやノウハウを紹介している。今回と次回ではメンバー追加やモジュール分割、課題管理、品質管理に関わる六つのセオリーを紹介する。

セオリー1
メンバーの追加は
“下っ端”が判断する

 一つめのセオリーは、「プロジェクトにメンバーを追加すべきどうかは現場の“下っ端”が判断する」である。

 「遅延しているプロジェクトに人を追加すると、さらに遅れる」というブルックスの法則をご存じの方は多いだろう。筆者の経験でも確かにその通りだと思うが、こんな例もある。「デスマーチ(失敗プロジェクト)」に陥る寸前で踏ん張っていたあるプロジェクトでは、要員を追加することで、明らかに状況が改善したのだ。

 では、誰がメンバーの追加を判断すべきか。最も正しく判断できるのは、現場の担当者である。マネジメント層が現場の状況を把握せずにむりやり人を追加するのは、現場にとって迷惑以外の何物でもない。

 マネジャーの中には「現場に判断を任せると、『自分たちが楽をするためにバッファーを増やそう』と考えるのではないか」などと危惧する人がいるかもしれない。実際、現場にだまされやすいマネジャーは存在する。

 しかし、普段から現場との信頼関係を築いていれば、こうした懸念は不要だ。マネジャーが「メンバーに責任を押しつけない」「うそや隠し事をしない」「意見や提案をきちんと聞く」「情報を共有する」「最後の最後は自分が全責任を負う」といった態度を取っていれば、現場はうそをつかず、常に正確な情報を上げるものである。