先行きの見えない「暗闇プロジェクト」には理不尽や不安が付きもの。払拭するのでなく、あえて受け入れる姿勢が大切だ。
「勘・経験・度胸」を軸とし、プロジェクトマネジメントの方法論はあくまでも道具と割り切りたい。

 この連載では、先の見えない「暗闇プロジェクト」でトラブルに陥らないための実践的なヒントやノウハウを紹介している。前々回(優先順位は「声の大きさ」で決める)と前回(半年前の合意は“期限切れ”)は合意形成のセオリーを取り上げた。今回と次回は現場でマネジャーやリーダーが実践すべき四つのセオリーを紹介する。

セオリー1
理不尽さを
あえて受け入れる

 暗闇プロジェクトでは理屈が必ずしも通用しない。現場には理不尽さが満ちあふれている。プロジェクトマネジャーやリーダーは、理不尽さをあえて受け入れる姿勢が大切になる。これが一つめのセオリーである。

 開発現場のリーダーを務めるA氏は、理不尽な要求や出来事に辟易していた。合意したはずの約束が、「どうしても必要なんだ」という利用部門の一言で破られる。他にも仕様のミスや部長同士の安易な約束が発覚。「名ばかり」マネジャーは無茶な要求を押し付ける。A氏は心身ともに疲労のピークにあった。

 ある日、A氏はついにキレてしまった。同氏が「百歩譲って」引き受けた機能に対して、利用部門がさらなる要求を出してきた。長時間、議論したものの、両者の主張はかみ合わない。利用部門は「やって当然だろう」という態度を見せる。

 極力冷静に対応しようとしていたA氏にも我慢の限界が来た。上司の制止を振り切り、A氏は自身の主張を裏付ける「証拠書類」を突きつけて、利用部門を徹底的に論破したのだ。険悪な雰囲気のまま会議は終了した。利用部門との関係は簡単には修復できそうにない――。

 こうなると、ただでさえ先の見えない暗闇プロジェクトは完全に頓挫してしまう。A氏は「プロジェクトは理不尽の連続である」という事実を受け入れるべきだった。その上で、自分には全く非がないことや不可抗力に対しても寛容になる覚悟が求められる。厳しい状況は変わらないにしても、現場のマネジャーやリーダーは多少なりとも気が楽になるはずだ。