先行きが見えない「暗闇プロジェクト」が増えている。従来の教科書的な知識では通用しないケースが多い。合意形成をあえて「先送り」するなど常識破りの打開策が有効になる。

 現代のシステム構築・導入プロジェクトの多くは、前例がない、あるいは経験がないといった、先の見えない「暗闇プロジェクト」と言える。

 この手のプロジェクトでは「常に変化し続ける状況に、いかに臨機応変に対応していくか」が成否の分かれ目となる。教科書的な知識は通用しにくく、“常識”とは異なる方策がむしろ奏功する場合が少なくない。

 筆者はベンダー側のプロジェクトマネジャー、ユーザー側のコンサルタントなど、様々な立場でプロジェクトの現場に携わってきた。本連載ではこれらの経験を基に、暗闇プロジェクトを任された場合に参考になりそうなヒントやノウハウをご紹介したい。

 今回取り上げるテーマは「合意形成」である。数多くのステークホルダー(利害関係者)の合意をいかに得るかが、プロジェクトの成否を左右する重要なポイントになるのは言うまでもない。

 暗闇プロジェクトでスピーディーに合意形成を図るにはどうすればよいか。五つのセオリーを紹介する。

セオリー1
優先順位は
「声の大きさ」で決める

 合意形成のセオリーの一つめは、要求の優先順位を「声の大きさ」で決めることだ。こう言うと驚かれるかもしれないが、よく考えてほしい。

 システムの要件定義の際にステークホルダー間でもめるのは、実は重要度が低い、あるいは不明確な要求に関してである場合がほとんどだ。皆が一つの目標に向かって頑張っているプロジェクトであれば、本当に重要な要求に反対する人はまずいない。

 であれば、要求の優先順位を声の大きさで決めて、プロジェクトを早く進めるのを優先させる、という方針でも特に問題はないと言えるだろう。