この連載では、先が見えない「暗闇プロジェクト」を任された場合に参考になりそうなヒントやノウハウを紹介している。前回(「曖昧さ」はプロジェクトを前に進める重要な方便)から、プロジェクトの計画段階での心得を見ている。

 「暗闇」で必要なのは、「見る前に跳べ」の姿勢だ。それを示す二つのセオリーを紹介する。

セオリー1
徘徊戦略をひそかに計画に組み込む

 前回のセオリー2で、「順次戦略」と「累積戦略」という二つの戦略を取り上げた。順次戦略はあらかじめ立てた計画に基づいて、順々にコトを進めるもの。累積戦略はとにかく様々な活動を実施していくと、ある時点から大きな効果を発揮するようになるというものだ。

 前回紹介したエピソードで、担当者のC氏をはじめとするチームメンバーはキーパーソンとなる理事長に接触するために、事前に立てた計画に基づいて行動したものの、事がうまく運ばない。そうしているうちに、先方から「会ってもいい」との返事が舞い込んできた。

 メンバーは当初、順次戦略に基づいて行動したが、理事長に会うことはできなかった。それが、場当たり的にでも多くの関係者と接触を続けたことが奏功して、先方とのアポを取り付けた。メンバーが取ったのは累積戦略だと言える。

 では、理事長のアポを取れたのは、累積戦略の効果であると言い切れるだろうか。確かに、200人以上の関係者に会っていなかったら、理事長の耳にC氏らのことは入ってこなかった。この意味で、累積戦略の効果はあった。

 だが、理事長は当初、C氏と会うつもりは全くなかったとのことだ。C氏らの活動は確かに理事長の耳に入っていた。ただ、良い情報ばかりではなかった。メンバーは猛烈な勢いで関係者と接触していただけに、ややおざなりな対応になる場合があった。そのことに対するネガティブな声も理事長は聞いていた。

 にもかかわらず、なぜ理事長は会おうと思うに至ったのか。順次戦略と累積戦略はどちらもそれなりに効果はあったが、決め手となったのは徘徊戦略、すなわち「とりあえず動いてみる」ことだった。この徘徊戦略をひそかに計画に組み込む、というのが一つめのセオリーである。