この連載では、先が見えない「暗闇プロジェクト」を任された場合に参考になりそうなヒントやノウハウを紹介している。今回からはプロジェクトの計画段階での心得を見ていくことにする。

 計画というと、多くの場合は非常にかっちりとした隙のないものを想像しがちだ。だが、そのような計画は「暗闇」ではかえってて逆効果になる。どのように進めるべきか、二つのセオリーを紹介しよう。

セオリー1
「曖昧さ」はプロジェクトを前に進める重要な方便

 新たにプロジェクトマネジャーに任命された、システムインテグレータのA氏。現場主義をモットーとしており、できる限り現場に接していたいと考えているが、なかなかそうはいかない。想定外の様々な割り込み作業が入ってくる上に、面倒な事務や報告の作業をこなす必要があるからだ。現場に対して、10分程度の最低限のフォローしかできない日も珍しくない。

 そんなある日、A氏は久々にまとまった時間が取ることができ、たまりにたまったドキュメントにひと通り目を通した。ドキュメントの確認を進めていくうちに、A氏はだんだんと不安になってきた。「ここに記述された内容は、レビューすべき担当者が事前にきちんとレビューしたのだろうか?」。

「余計なことはしないでほしい」

 A氏は早速、担当のSEを呼んで確認したところ、こう答えた。「ああ、その部分ですか。顧客からは『自分たちで考えるから、関与しなくていい』と言われました」。

 この回答を聞いても、A氏の不安は解消されない。これまで幾度となく、こうした場面で担当者の言うことを信用したものの、後で痛い目に遭ってきたからだ。A氏は顧客に自ら足を運び、担当者に直接確認することにした。

 A氏が懸念している箇所は、顧客担当者の所属部門だけが意思決定できるわけではなく、△△システムを管理する○○部門との調整が必要なはずだ。ところがA氏が確認したところ、○○部門とは調整していない。A氏がこの点を指摘すると、顧客の担当者は「連携が必要なことは理解していますが、今は気にしなくていいですよ。我々が考えるので、御社に関与していただく必要はありません」と語った。