この連載では、先が見えない「暗闇プロジェクト」を任された場合に参考になりそうなヒントやノウハウを紹介している。前回(プロジェクトが支離滅裂? そんなことは当たり前)から、プロジェクトの最初期の段階である準備・構想段階での心得を紹介している。

 今回も、「どうせダメに決まってる」と思われている状況でプロジェクトを立ち上げるためのセオリーを見ていこう。

セオリー1
品質、納期、費用、機能のどれかをバッサリ切る

 暗闇プロジェクトが、自社の実験的なパイロットプロジェクトとして始まるとは限らない。顧客相手の通常の契約形態のプロジェクトが「暗闇」である場合もある。

 開発を請け負うシステムインテグレータにとって、契約の内容次第では非常にリスクが大きいプロジェクトとなる。ユーザー企業P社の案件は諸事情により、「暗闇」でも受けざるを得なかった。

 暗闇プロジェクトには「多くのステークホルダー(利害関係者)が絡む」「ステークホルダーの全容が見えない」という共通点がある。このプロジェクトも例外ではなかった。

プロジェクト途中で赤字に、何を捨てるか?

 プロジェクトのタスクは大きく「人間系のコミュニティー作り」と「システム系のモノ作り」の2種類があった。このうち、モノ作りは極めて順調に進んだ。多少の追加変更要求は生じたが、1カ月に2%に満たないレベルであり、現場レベルの調整だけで十分に対応できた。

 ひと筋縄でいかなかったのはコミュニティー系のタスクだ。新たなステークホルダーが登場するたびに追加要件が増えていく、というのはプロジェクトでよく見られるパターンである。P社のプロジェクトもステークホルダーが徐々に増えていったが、要件が増えるという問題は生じなかった。