この連載では、先が見えない「暗闇プロジェクト」を担当するマネジャーにとって参考になりそうなヒントやノウハウを紹介している。

 前々回(「スモールデータ」でも投資効果を定量化できるテクニックは存在する)と前回(一見スキがない「正確かつ合理的・論理的な推進計画」こそ疑え)では、情報が限られたなかで相手を納得させるテクニックを紹介した。

 暗闇プロジェクトでは、情報が限られたなかで思わぬ事態にいかに対応するかが大切になる。その際に役立ちそうな二つのセオリーを紹介する。

セオリー1
楽観的な行動力は大事だが、限度をわきまえる

 コンサルティング会社のZ社に勤めるJ氏は、入社3年目の若手である。その突破力に、上司も一目置いていた。プロジェクトを推進する力が、ずばぬけていたからである。

 追加調査が急きょ必要になると、ネットで検索して見つけた見ず知らずの会社に電話をかけて、担当者を探し出し、情報を収集する。J氏にとって、こうした機敏な行動は朝飯前だ。

 当然、上司からは重宝されている。先が見えず、計画も立たない暗闇プロジェクトの推進に向いている、との評価を受けている。

 J氏はあるとき、Z社のチャレンジプロジェクトに参画することになった。Z社として知識やノウハウの蓄積が全くない業界向けコンサルティングサービスを立ち上げるのが狙いだ。

 Z社にとっては新規参入だが、顧客に対しては「その道のプロ」であるかのように振る舞わなければならない。「この業界は素人です」などとは言ったら当然、信用してもらえない。

 J氏は、1日も早くプロらしく立ち回れるよう努力した。必死に勉強して基礎知識を身につけるとともに、セミナーやシンポジウムに参加し、最新情報を習得していく。物おじや人見知りをせずにどこにでも飛び込んでいき、嫌われることなく、すぐになじむ性格も奏功して、業界内で着々と人脈を広げていった。