この連載では、先が見えない「暗闇プロジェクト」を担当するマネジャーにとって参考になりそうなヒントやノウハウを紹介している。

 前回(「スモールデータ」でも投資効果を定量化できるテクニックは存在する)は、情報が限られたなかで相手を納得させる数値を作るテクニックを紹介した。

 今回はその続きである。情報が限られたなかで説得する際に踏まえておきたい、二つのセオリーを紹介する。

セオリー1
根拠に基づいた正確かつ合理的で論理的な推進計画を疑え

 ユーザー企業Q社で、全社的な大規模なシステム導入プロジェクトの企画が立ち上がった。多くの部門をまたがるプロジェクトであり、成功するには部門間の協力が必須になる。特に重要なA部門とB部門を巻き込まなければならない。

 問題は、A部門のX部長と、B部門のY部長が犬猿の仲であることだ。企画が持ち上がった際も、懸念すべき点として挙がった。

 X部長とY部長は同期入社で、共に出世頭である。プロジェクトの立ち上げを任されたSプロジェクトマネジャーは、X部長とY部長の仲が悪いのは当然知っている。しかし、「出世頭同士のライバル意識が原因だろう。二人とも目に見える実績を積み重ねて、ここまでのし上がってきた。双方にとってのメリットを明確にすれば、協力してくれるに違いない」と高をくくっていた。

ロジックに誤りなし、ファクトデータに不足なし

 Sマネジャーは早速、「新システムの導入により、A部門とB部門がそれぞれどのようなメリットを得るかを整理してほしい」と部下に指示した。その結果を基に、X部長とY部長向けに説明資料を作成した。

 プロジェクトにA部門とB部門が参加すると、享受できるメリットが双方とも大きくなる。説明資料では、この点を理由とともに明記したうえで、それぞれの部門にとってのメリットを丁寧に記述した。