この連載では、先が見えない「暗闇プロジェクト」を担当するマネジャーにとって参考になりそうなヒントやノウハウを紹介している。

 マネジャーが意思決定をしたり、相手に説明したりする際に「データが十分にそろっている」ケースは無いに等しい。その中で、投資効果の定量化といった相手を納得させる数値を作り出していかなければならない。今回はそのための二つのセオリーを紹介する。

セオリー1
効果の定量は難しくても、食らいつく姿勢が不可欠

 あるシステム構築プロジェクトが無事に完了し、本稼働を迎えた。それから程なく、プロジェクトマネジャーは経営層から、「新システムの導入で得られる投資対効果を教えてほしい。できるだけ正しい、定量的な数値が欲しい」との指示を受けた。

 経営層が「新システムの導入効果がどの程度か」と尋ねてくるのは多くの場合、システム構築前の企画段階である。今回のように、本稼働後に投資対効果を求められるケースはあまりない。

 システムは実用段階に入っているので、実際のデータを測定できる段階にある。企画段階よりも、投資対効果を測るのは簡単に思える。しかし、プロジェクトマネジャーは「これはやっかいだな…」と頭を悩ませた。ある数値がシステムを導入する以前に比べて改善できたとしても、それが「システム導入の効果である」と言い切れるかどうかを確認するのは容易でないからだ。

「そんなロジックや理由を作るのは無理だ」

 さらにプロジェクトマネジャーを悩ませたのは、経営層が「できるだけ正しい、定量的な数値が欲しい」と要求していることだ。

 経営層が投資対効果を求める場合、通常は「それなり」の厳密さで許される。本人が知りたいというよりも、「誰かに説明しなければならないから」という理由であるケースが多いからだ。投資対効果を厳密に測るのが難しいのは、経営層も一応分かっている。