この連載では、先が見えない「暗闇プロジェクト」を担当するマネジャーにとって参考になりそうなヒントやノウハウを紹介している。

 プロジェクトの現場で問題が起こらないことはまずあり得ない。特に暗闇プロジェクトでは、大小様々な問題が毎日のように発生する。その多くは技術的な問題ではなく、人間に関わるものだ。そうした問題に早く気づき、対応するための三つのセオリーを紹介する。

セオリー1
マネジャーにとって最も大切な仕事は社会的・文化的問題の処理

 マネジャーが最も忙しくなるのは通常、プロジェクトを立ち上げる時期である。プロジェクト計画書(開発計画書)の作成に加えて、顧客との頻繁な打ち合わせ、社内の事務手続きもある。協力会社との交渉や調整などに追われることになる。

 幸い、マネジャーのA氏が参加したあるプロジェクトでは、立ち上げのフェーズでこうした業務に忙殺されずに済んだ。諸々の事情でプロジェクト環境が既に整備されており、Aマネジャーが一から動く必要がある仕事は少なかったからだ。

 Aマネジャーはこの段階で、プロジェクトリスクの抽出や対策、スケジュール、体制、会議体、運用フロー、文書類の整備といったプロジェクト計画の策定作業を、十分に時間をかけて進めることができた。

「向こうもちゃんと進んでいるようですよ」

 今回のプロジェクトは規模はそれなりに大きく、A氏はプロジェクトの専任マネジャーを務めた。サブシステムの各チームリーダーには知った顔も知らない顔もあるが、皆そこそこのベテランであり、マネジャー自身が手を動かす必要はなさそうだ。この点でも、Aマネジャーは安心していた。