この連載では、先が見えない暗闇プロジェクトを乗り切るためのヒントやノウハウを紹介している。前回から、プロジェクトで発生した問題への「暗闇」ならではの対処法を紹介している。

 今回は問題への対処に関する三つのセオリーを取り上げる。どれも正攻法とは程遠いが、「暗闇」では効果的なやり方だ。

セオリー1
タイミングをずらして危機をスルーする

 同じ事象でもタイミングによって、危機となったりならなかったりする。顧客や上司に時間の余裕があれば「危機」とラべリングされる事象も、忙しければ無視されたり放置されたりする。同じ報告内容でも、顧客や上司に問題視される場合もあれば、スルーされる場合もある。

 タイミングをずらせば、危機を危機でなくすことができるわけだ。これがセオリーの一つめである。このことを示す二つのエピソードを見ていく。

エピソード1:課題への対応をあえて延ばす

 「早く対応しないと大変なことになります」。慌てた様子で部下がマネジャーに進言する。マネジャーは冷静に「準備だけをしておけ。実行するのはまだだ」と答える。「1週間前まで、マネジャーのほうが焦っていたのに」と部下は不思議に思う。

 定例報告の場では案の定、課題への対応がほとんど進んでいないと顧客の担当課長に責められる。マネジャーは恐縮した様子を見せつつ、やり過ごしに徹する。部下はその様子をひやひやしながら眺めている。