先が見えない暗闇プロジェクトで生じる問題を解決しようと、いくら労力をかけても奏功しないケースは多々ある。特に注意したいのは、経営層が「それだ!」とほれ込むような策だ。

 そのやり方が実際の問題解決に役立つことは、残念ながらまずあり得ない。今回はそれを示すセオリーを紹介する。

セオリー1
上層部が決定した「大々的」な解決策では問題は解決しない

 顧客からの問い合わせやクレームへの対応をはじめとする人間が関わる業務は、どうしても自動化がしにくい。CRM(顧客関係管理)システムで顧客対応の品質を向上できても、業務は労働集約的になりがちで人件費がかさむ。

 G社は社内の各部署でコスト削減目標を設定し、業務効率化を進めている。ところが顧客対応の部署は目標の達成に程遠い状況だ。経営会議では都度、この部署の担当部長がやり玉に挙げられる。

 業務に精通している担当部長は「自動化しろ」といくら言われても、ITを導入するだけでは省力化・効率化に限界があることを知っている。しかし、数字しか見えない経営層は「人件費がかかっている」「その割にミスの発生率が高い」「ミスの防止に向けてダブルチェックの要員を追加したので、人件費がより増えている」点に強く不満を抱いている。

 担当部長がいくら事情を説明しても、現場を知らない経営層にはピンと来ない。逆に「言い訳ばかりする」との烙印を押されてしまう。

「監視ツールを入れれば、一発で解決しますよ」

 ちょうどそのタイミングで、コンサルティング会社のH社がG社経営層のもとを訪れた。話を聞いたコンサルタントは「今どき、まだ人海戦術でやっているのですか。監視ツールを入れれば、問題は一発で解決しますよ」と売り込みをかける。