この連載では、先が見えない「暗闇プロジェクト」を担当するマネジャーにとって参考になりそうなヒントやノウハウを紹介している。

 前回(現場に行かずにマネジャーが危機の予兆をつかむ方法は存在する)から、危機の兆候を察知するためのセオリーを紹介している。今回も、そのために役立つ二つのセオリーを取り上げよう。

セオリー1
「メンバーが何にコミットしているか」でリスクの芽をつかむ

 メンバーが何にコミットしているか、すなわち何を重視しているか。暗闇プロジェクトでのリスクの洗い出しは、この点を把握することから始まる。これがセオリーの一つめだ。

 コミットしている対象別に、四つのケースを見ていく。

ケース1:「顧客の現場」にコミットしている

 遅刻は多い。指示した事項のうち、10%は忘れる。指示していないことを勝手にやり始める──。IT企業に勤める若手メンバーであるC氏の行動や言動を、周囲のメンバーはハラハラしながら見ている。

 C氏は決して「ダメ社員」ではない。むしろその逆だ。仕事はできるし、何より顧客の担当者から絶大な信頼を勝ち得ている。まさに「顧客の現場」にコミットしており、とにかく目の前の顧客のために仕事をしたいと考えていた。

 顧客のための作業であれば、残業や休日出勤もいとわない。一方で、顧客のためにならない業務には乗り気にならない。特に、マネジャーが会社の利益を重視し、顧客の利益が犠牲になるような指示を出すと、C氏のモチベーションは非常に下がる。

マネジャーはここに注意!

 C氏は顧客のためと言っているが、顧客のマネジメント層にコミットしているわけではない。あくまで、顧客の現場しか見えていない点に注意が必要だ。

 同じ顧客企業でも、経営層と現場ではニーズや問題意識が全くと言っていいほど異なる。C氏のような若手は、このことを頭では理解していても、肌感覚ではいま一つピンと来ていないケースが多い。口頭で注意すると「分かりました」と答えるものの、行動はやはり「顧客の現場が一番」になってしまう。