この連載では、先が見えない「暗闇プロジェクト」を任された場合に参考になりそうなヒントやノウハウを紹介している。

 前回(予期せぬ“危機”に事前に手を打つ秘策)から、暗闇プロジェクトに役立つ要件定義の進め方を紹介している。前回は要求仕様に関する二つのセオリーを紹介した。今回はの三つのセオリーを取り上げよう。

セオリー1
報告書は「行ったつもり」で事前に書く

 新人プロジェクトマネジャーA氏は、「現場ユーザーへの要件ヒアリングは準備が肝心」と考え、質問項目を思いつくまま10個、20個と挙げたリストを持って現場に臨んだ。ところが、その中で使いものになった質問は3、4個しかなく、残りは前提条件が全く違っていたなどで、その場では使えなかった。

「無理やり増やした感がアリアリだ」

 どのような業種であれ、要件ヒアリングは通常、1時間あっても足りないくらいなのが普通である。ところがA氏のヒアリングは15分で終わってしまった。

 ヒアリング結果を持ち帰ってマネジャーに報告に行ったA氏を待っていたのは、質問の嵐である。「これはどうだ」「あれはどうだ」「いつもこうなのか」「条件は付いていないのか」──A氏のしどろもどろの回答を聞いて、「なんだ、重要なことは何も聞いてきていないじゃないか。もう一回行ってこい」とマネジャーはA氏に言った。

 マネジャーはA氏に対し、リストを作る際のヒントを与えた。「詳細化や具体化、条件分けを踏まえて、質問を考えてみたらどうか」というものだ。