先が見えない暗闇プロジェクトでは絶えず新たな問題が発生する。問題をうまく解決できるかどうかは、事前の想定や準備がどれだけできているかにかかっている。

 今回はこのトピックに関する二つのセオリーを取り上げる。

セオリー1
抜本的な対策の効果は長続きしない

 A社は沈滞ムードというか、全体に重苦しい空気に包まれている。特別な出来事が起きたり、業績が大きく落ち込んでいたりするわけではない。社員評価のやり方が原因だと考えられる。

 評価シートは存在するし、各人がどれだけ実績を上げたかも明らかになっている。ところがどれだけ仕事をしたか、実績を上げたかは評価に直結しない。かといって年功序列で評価しているのではない。評価者を務めるP取締役と相性が合うかどうか。これで評価が決まるのである。

改革の取り組みは奏功せず

 P取締役と相性がいい社員であれば、数字が悪かったとしても「あれは顧客が悪い」「誰がやっても失敗する」「運が悪いプロジェクトだった」などと理由を付けて評価される。実績に責任を負う立場の部長や課長でさえ、そのように評価される。結果的に、P取締役に気に入れられている社員や幹部に悪い評価が付くことはない。

 大変なのはP取締役と相性が悪く、気に入られていない社員や幹部だ。いくら実績を残したとしても「あれは簡単なプロジェクトだった」「誰がやってもうまくいく」と難癖をつけられる。結果に直結するパフォーマンス評価も低い。

 こうした評価のやり方はもちろん表には出ていない。だが時間が経つにつれて、A社の誰もが知るところとなり、社内は徐々に沈滞ムードに包まれていった。P取締役に気に入られた人はのうのうと安住し、気に入られない人はやる気を失っていくのだから当然だろう。このような状況が何年も続いていた。

 P取締役は、A社の沈滞ムードの原因が自分にあるとは気づいていない。ただ、組織を立て直すために何らかの策を講じる必要があると考えていた。業績が大きく落ち込んでいるわけではないが、好調とはいえない。社員数は漸減しており、プロジェクトはよく火を噴く。営業担当者は深夜まで提案書を書いているが、疲弊するだけで努力に見合う成果を上げていない。

 そこで組織改編を実施する、評価指標を一新するといった改革の取り組みを2年ほど続けたが、会社の業績は横ばいで、相変わらず沈滞ムードが漂う。P取締役は相性による評価を変えようとせず、指標は悪い評価をつけた社員に説明するための道具の役割しか果たしていない。