「暗闇プロジェクト」では、利用部門をはじめとするステークホルダーとの不毛なやり取りはできるだけ避けたい。
相手が選んだ選択肢で二者択一を迫られたら、とりあえず即断即決を避ける。
厳しい発言は割り引いて聞く姿勢も大切になる。

 先の見えない「暗闇プロジェクト」でトラブルに陥らないための実践的なヒントやノウハウを紹介するこの連載も、残すところ2回となった。

 IT部門が利用部門とのやり取りをいかにスムーズに進めるかは、プロジェクトの成否を大きく左右する。暗闇プロジェクトでは、なおさらのことだ。今回は利用部門への対応に関する四つのセオリーを紹介する。

セオリー1
二者択一を迫られたら
とりあえず「逃げる」

 A社でIT部門のマネジャーを務めるB氏は、利用部門からの突き上げ、上司からのプレッシャー、ベンダーからの抗議と泣きつきなどの板挟みになりながら、暗闇プロジェクトを率いていた。中でも対応が難しかったのは、利用部門からの厳しい要求だった。

 「難しいことは分かっていますよ。結論だけを言ってください。結局、やってくれるんですか、くれないんですか」。利用部門の担当者はB氏に対し、常にこのような二者択一を迫った。

 どちらを選ぶにしても、B氏にとっては分が悪い。勢いに押されて「やります」と言ってしまうと、コスト増につながるのは明らかだ。ベンダーとの新たな折衝が必要になり、プロジェクトが遅延する可能性も出てくる。だが、むげに要求を断ると、今後のプロジェクト運営に悪影響を及ぼしかねない。B氏の心労はたまるばかりだ─。

 こうした事態を避けるために、二者択一を迫られたら、とりあえず「逃げる」。一つめのセオリーがこれだ。

 二者択一とは、無数にある選択肢の中から相手が勝手に選んだ二つのどちらかを選ぶことを指す(図1)。こうした状況での即断即決は避けたい。「相手が勝手に作ったルールの中で戦わない」というのは基本であり、その基本を見失ってはいけない。落ち着いて考えてみれば、「二者」以外にも対応の仕方がある点に気づくはずである。

図1●二者択一を迫られたら逃げる
図1●二者択一を迫られたら逃げる
相手が示した選択肢以外を考える
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