現代のシステム構築・導入プロジェクトの多くは、前例がない、あるいは経験がないといった、先の見えない「暗闇プロジェクト」と言える。この連載では、暗闇プロジェクトを任された場合に参考になりそうなヒントやノウハウを紹介する。今回は前回に続いて、メンバー管理に関するセオリーを取り上げる。

セオリー4
対立するメンバー同士を
「泣くまで」口論させる

 プロジェクトは複数のメンバーで進める以上、どうしてもメンバー間の対立は避けられない。事実誤認や前提条件の認識違いが対立の原因であれば、事実を一つひとつ確認していくことで解消できる。

 解決が難しいのは、メンバー同士の感情的な対立だ。この場合の「事実」はメンバーのプライベートな領域や価値観、哲学などに関わっており、確認するのは不可能に近い。

 こうした場合に、対立するメンバー同士を極端な話、「泣くまで」口論させてみる。これがセオリーの四つめである。感情的な対立の裏には「年長なのに尊敬されない」「重要なプライベートが犠牲になった」といった本音があるはずである。こうした本音は通常、固くガードされているが、互いに感情を爆発させた結果、ポロリと出てくるものだ。そこから、和解への道が開ける可能性がある。

 F社のプロジェクトでは、メンバー二人の対立が深刻化していた。マネジャーは二人に対し、「互いに言いたいことを全て言うように」と指示し、とことん口論させた。やり取りが進み、感情が高ぶった一人が「もういい!」と会議室を出ていきそうになった。しかしマネジャーはそのメンバーを引きとめ、議論を続けるよう促した。

 こうして議論を続けているうちに、一方が泣きながら「本音」を告白し始めた。その場はこれで終わった。

 この一件で、メンバーの対立が解消されたわけではない。しかし、その後はプロジェクトをなんとか遂行できるレベルに落ち着いた。もしも、もう一人のメンバーも「本音」を告白するところまで行っていたら、両者は和解できたかもしれない。