この連載では、先が見えないプロジェクトを「暗闇プロジェクト」を担当するマネジャーにとって参考になりそうなヒントやノウハウを紹介している。

 前回(会社で最重要のルールはどこにも書いていない、でも知らないと反感買う)は、新任あるいは他の会社から転職したマネジャーが押さえておくべきポイントを説明した。

 暗闇プロジェクトで難しいのは、経営層への説明だ。暗闇である以上、あらかじめ綿密な計画は立てられないが、説明のためには何らかの計画づくりが欠かせない。どこまでを言うかの線引きも大切だ。今回はこれらに関する二つのセオリーを紹介しよう。

セオリー1
「暗闇」でも詳細な計画作りは必要だと割り切る

 ソフトウエア事業部門の事業部長に昇進したばかりのF氏。初のマネジャー職に、やる気満々である。

 同時に強いプレッシャーを感じていた。社長から「何か新しい飯のタネを育ててくれ」と言われていたからだ。事業部長にこうした役割が求められるのは覚悟していたものの、F氏はどちらかというと新しいことに挑戦するよりも、定められたレールの上をきっちり走って堅実に実績を上げる方が得意だった。

「計画書をもう少し具体的に書けないか」

 F氏は部下のG氏を「新事業立ち上げリーダー」に任命した。G氏は他の部署から移ってきたばかりで、G氏の元上司から「そういう仕事なら、こいつが向いていると思う」と推薦された人物である。F氏はG氏に対し、IPA(情報処理推進機構)の「未踏ソフトウェア創造事業」を例に出して、「このような新しい領域にチャレンジしてほしい」と期待を示したうえで、多くはないが予算を与え、メンバーを数人アサインした。

 G氏は早速、新事業のアイデアを三つほど考えてF氏に見せた。しかしF氏には、どれもピンと来ない。アイデアが曖昧模糊としているからだ。F氏はG氏に対し、「詳細なものでなくていいから、事業計画書のフォーマットにのっとって出してほしい」と指示した。

 ほどなく、G氏は計画書を三つ作成して持ってきた。やはり、F氏には未完成の計画書としか思えない。投資額やプロジェクトの目的、意義、期待される効果などは明確になっている。一方で、そのプロセスや詳細な作業項目、WBS(ワーク・ブレークダウン・ストラクチャー)、スケジュールは概要レベルの記述にとどまっているのだ。