この連載では、先が見えない「暗闇プロジェクト」を主導するマネジャーが持つべき心得や運営のヒントを事例とともに示している。

 暗闇プロジェクトで発生する問題の解決は容易でない。ロジカルに解決できるとは限らないし、情報を集めたからといって解決できるわけではない。そのことを示す二つのセオリーを紹介する。

セオリー1
「ロジカル問題解決」では問題を解決できない

 ある業界には、業界向けパッケージ製品を提供する大手ITベンダー2社ががっちり食い込んでいる。大手企業のほとんどは2社のうち、どちらかの製品を利用しており、新規参入の余地はないように思える。

 そんな状況のなか、ベンチャー企業T社がこの業界への参入を狙っていた。大手ベンダーにはない先端的な技術と充実した機能が売り物である。

 「話を聞いてもらえさえすれば、絶対に興味を持ってもらえる」。T社のHマネジャーは自社製品に自信を持って、営業活動を進めていた。

 しかし、業界では無名の存在である。先方に話を聞いてもらうことすらできず、門前払いを食らう日々が続く。

 そんなとき、社内の一人が業界大手の1社の担当者とつながりがあることを、たまたまHマネジャーは知った。そのつてを頼り、「話だけなら」と、担当者に時間を取ってもらうことに成功した。

 この会社は、業界でも特に名が通った法人グループである。奇跡的に、2強ベンダーはどちらも入り込めていないという。商談がうまくいけば、大手による寡占状態である業界の一角に、小さいながらも風穴を開けられそうだ。Hマネジャーは期待に胸を膨らませた。

「会えば、きっと何とかなる」

 プレゼン当日。Hマネジャーの予想通り、担当者はT社のパッケージ製品に興味を示し、「もっと詳しく説明してほしい」と希望してきた。

 その後、担当者と3回面談し、製品に関して詳細に説明した。その結果、担当者の上司に当たる部長へのアポを取り付けることができた。部長が、システム導入に関する事実上の意思決定権を持つ。