この連載では、先が見えない「暗闇プロジェクト」を主導するマネジャーが持つべき心得や運営のヒントを事例とともに示している。前回から、問題解決について取り上げている。今回も問題解決に関わる二つのセオリーを紹介する。

セオリー1
「ウソだろ?」と思う問題は意外と普通に起こる

 暗闇プロジェクトは、仮に失敗しても経営に大きなダメージを与えない程度の規模で進めるのが普通だ。こうしたプロジェクトでは、得てして寄せ集めのメンバーで体制を組むことになる。

 すると、メンバーに「問題児」が入り込む確率が高くなる。そのエピソードを三つ見ていく。

エピソード1:ファイルを全て削除した問題児

 以前の連載で、上司とケンカした問題児のメンバーが、サーバー内のファイルを全て削除した事例を紹介した。

 データを復旧できないと、契約不履行で数千万円単位の損害が出る可能性がある。気の弱いマネジャーであれば、動転してパニックを起こしそうな状況と言える。

 しかし、上司であるマネジャーのC氏は落ち着いていた。このメンバーは優秀であり、「本当にデータを消してしまうと、会社から損害賠償を請求される可能性があるのはきっと分かっている」と考えていたからだ。

 Cマネジャーは強硬策をあえて選択しない。代わりに行ったのはご機嫌取りだ。メンバーの機嫌をうかがいつつ、「何とかデータを復旧してもらえないだろうか」とお願いする懐柔策を実行した。

 このメンバーは全てのデータのバックアップを取っていた。マネジャーが思っていた通りだ。懐柔策が奏功し、全てのデータを無事に復旧できた。

エピソード2:常に周囲とトラブルを起こす問題児

 別のプロジェクトの話だ。ここにも問題児のメンバーがいて、チームメンバーとの間で大小様々なトラブルを常に起こしていた。

 仕事ぶりは悪くない。成果物は質、量ともに平均を上回っている。しかし、その振る舞いによって、チームの生産性は激しく低下している。マネジャーのD氏は、事態を看過できなかった。