この連載では、先が見えない「暗闇プロジェクト」を任された場合に参考になりそうなヒントやノウハウを紹介している。

 暗闇プロジェクトを仕切るマネジャーには、どんな資質が必要なのか。どんな人を目指すべきか。今回は、これらに関する二つのセオリーを紹介しよう。

セオリー1
ジャイアン、スネ夫、のび太の誰を目指すべきかを考えてみる

 プロジェクトを成功させるにはどうすればよいのか。マネジャーとして長年プロジェクトの経験を積み、常に勉強を続けてきたベテランでもなかなか答えは出せないものだ。

 経験が浅いうちは、「こうすればうまくいく」というベストプラクティスの存在をどう信じる。だが、プロジェクトの経験を積むうちに、ベストプラクティスではうまくいかないと悟るようになる。成功のための肝だと思っていた教訓やノウハウのいくつかが、逆に「絶対にやってはいけない」ものだと分かったりする。

 こうして思考錯誤を繰り返すうちに、マネジャーに対して「ここは間違っているのではないか」と思うようになり、やがて「マネジャーはこうあるべき」との意見を持つようになる。

 試しに、藤子・F・不二雄氏の人気コミック「ドラえもん」のキャラクターになぞらえて、ジャイアン、スネ夫、のび太の誰を目指すべきか、を考えてみよう。これがセオリーの一つめだ。考えるための材料として、三つの例を紹介する。

例1:ジャイアン型マネジャーのA氏

 社内の雰囲気が「緩んでいる」と感じた某IT企業の部長。外部からコワモテのマネジャーA氏を連れてきた。

 周囲はA氏に対して「とにかく怖い」との印象を抱いた。怒鳴り散らすからだけではない。頭の回転の速さや仕事の知識の豊富さで、社内にかなう者がいなかったからだ。社内はこれまでにない緊張感に包まれた。

 それでも、A氏率いる1発目のプロジェクトは大成功だった。A氏が細かくチェックしたことに加えて、A氏を恐れて生産性が1.2倍になったからである。ただし、残業時間は1.5倍になった。