前回はOpen Compute Project(OCP)とはどういったプロジェクトなのか、またOCPの適合領域について触れた。今回は、OCPを採用することによる具体的なメリットについて解説していく。

三つの特徴でコスト削減を実現

 米Facebookが自社使用のハードウエアの設計を行った理由は、徹底的に無駄を排除し、効率化によってデータセンターにかかるコストを削減するためである。

 具体的には、(1)省電力、(2)省ペース、(3)メンテナンス性の向上――により、これらコスト削減を実現している。これらの三つがOCPの最大の特徴と言ってもよい。それぞれ、詳しく解説しよう。

(1)省電力:AC-DCの変換回数を抑えてロスを防ぐ

 OCPのラックはOCP機器をラッキングするための専用ラック(OpenRack)となっており、このラックが特徴的な構造をしている。多くの汎用IAサーバーはサーバー本体にパワーサプライ(電源装置)を搭載しているが、OpenRackではサーバーが個々に持つパワーサプライをラックレベルに集約し、一括で受電する構成になっている。

 多くの場合、商用電源(AC:交流)からUPS(無停電電源装置)に供給され、UPS内部で交流(AC)→ 直流(DC)変換によって蓄電したのち、再度交流(AC)に変換し直してサーバーへ電源供給する。サーバーでは、交流(AC)をさらに直流(DC)に変換し、マザーボード、CPU、メモリー、HDDなどの各部品に供給する。つまり現在の電源システムでは、交流 → 直流 → 交流 → 直流と3段階の変換を行っていることになる。

 交流(AC)と直流(DC)の変換には、一般に10%~20%程度のロスが発生すると言われている。OCPのOpenRackではラック内のパワーシェルフで交流(AC)から直流(DC)へ変換し、ラック背面にある直流(DC)バスバーを経由してサーバーに直流給電する方法が採用されている(図1)。

図1●高い電力効率を実現するOCP
図1●高い電力効率を実現するOCP
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 この方法により、商用電源からサーバーまで間の交流(AC)と直流(DC)の変換回数を抑え、変換ロスによる無駄な電力消費をできるだけ少なくしている。直流(DC)で動作するサーバー機器に直接給電することにより、高い電力効率を実現する。