企業システムに対して、モバイル機器からのアクセスが主流になると、これまでPCからのアクセスを前提としてきた運用や開発が変わってくる。モバイルからのアクセスは、これまで内部に閉じてきた自社サービスの外部化を促すことになる。自社サービスをAPI化することで新たな展開も広がる。

 前回は、モバイル環境を導入する際に企業が考慮すべきセキュリティ要件や、最新のセキュリティ対策について解説した。こうした対策を含め、既存の情報システムに対するモバイル環境への対応を素早く実施し、ユーザー部門の高い利用率と業務効率化を実現するには、具体的にどのような方法があり、どういったポイントを重視すべきなのだろうか。

 第2回で述べたように、企業のバックエンドシステムのモバイル対応は、これまで企業が自社内にとどめていたサービスの外部化の契機となる。具体的には、API(アプリケーション・プログラミング・インタフェース)の形で、外部に公開する。こうしたサービスの外部化は、既存ビジネスのスキームや事業構造といったものを抜本的に変え、一部のテクノロジー先進企業だけではなく、既存の大企業にとっても新たな価値の創造やサービスの提供につながる可能性を秘めている。今回は、モバイル環境の開発・運用や、自社サービスを外部化するために使えるモバイルプラットフォームについて解説する。

 情報システム部門の中堅SEであるA氏。社員や取引先企業にBYOD(Bring Your Own Device、私物端末の業務利用)で自社システムを使うことを前提に必要な開発プランを練り始めた。しかし、ユーザーは様々なスマートフォンやタブレットを使い、さらにOSもiOSやAndroidなど多様。こうした様々なデバイスから、既存のバックエンドシステムにアクセスしてもらうためのモバイル環境を素早く、かつ「使える」環境にするには、どういった仕組みを構築すればいいのだろうか。