機器の価格下落やネットワークインフラの整備、データ分析技術の向上を背景にIoT(Internet of Things)による産業の発展への期待が高まっている。今後、IoTが広く社会に浸透していくためには、供給者視点ではなく、ネットワークに参加する企業やパートナー、ユーザー視点による価値の見直しが必要だ。

 IoTに注目が集まっている。インターネットがモノとモノとをつなぐ領域にまで拡大しており、既に世界の人口を超える機器がインターネットにつながっている。今後、チップの価格下落や技術の向上を背景に、ますます多くの機器がインターネットに接続される。調査会社の米ガートナーが2013年に発表したデジタル技術の展望に関する調査レポートでは、IoTに関連する経済効果は2020年にはグローバルで1.9兆ドルを超すと推計している。

ワインの育成にもIoTが貢献

 IoTが適用される領域は、家庭、自動車、農業、産業機器、健康、金融、小売り、交通、都市、エネルギーなど多岐にわたる。様々な産業においてIoTによるビジネスの可能性が議論されている。当社でもそうしたIoTビジネスを支援している。

 事例の一つとして、米国におけるワイン用のぶどう生産農家の取り組みを紹介する。ワイン用のぶどうは品質によって1トン当たり100倍もの価格差が付くことがある。そのため品質向上は最優先課題となる。そこで、ぶどう畑にセンサーを張り巡らせ、土壌の温・湿度、栄養状況、風向き、気温、などをリアルタイムで分析。水や肥料の供給に生かすことで、良質なぶどうの育成に貢献するとともに、オペレーションの効率化にも成功している。

 半導体製造装置メーカーにおいてもIoTは効果を発揮している。従来、製造装置メーカーの顧客である半導体メーカー自身が、装置に関する深い知識を有し、高い知見を持った技術者を社内に育成してきた。しかし需要が急拡大する新興国市場では、半導体メーカーは製造装置メーカーに対して、以前よりも多くのサポートを求めるようになった。そのため製造装置メーカーは、既存のサービス内容を維持するだけではアフターサービスが行き届かず、対応が後手に回ることも少なからずあったという。