都道府県CIO フォーラムは、第12 回年次総会を8 月25 日・26 日の2 日間にわたって佐賀市内で開催した。初日のテーマは、自治体で実装段階に入ろうとしているマイナンバーシステムに関して。ガイドラインがなかなか提示されない中で、どのような行動を採るべきか議論がなされた。2 日めは、オープンデータ政策への取り組み方法を議論。続いて、実際にテレワークを利用している県庁職員による報告会を行った。また、26日・27日に初の試みとしてICT 利活用先進事例の視察を実施。佐賀県内の農業改良普及センターや学校を訪問した。

(構成:本間 康裕=日経コンピュータ、写真:諸石 信) 

 初日はマイナンバー制度のためのシステム実装について議論した。事前のアンケート調査では、システム改修・整備への国庫補助金に関して3種類のシステムで対照的な結果が出た。税務システムは比較的改修が進んでおり、おおむね十分が10団体、やや不足(2割程度以内)・大きく不足(3割程度以上)が21団体、不明が16団体だった。ところが福祉関係システムでは、37団体が不明と回答(おおむね十分1団体、不足9団体)。改修が進んでいないことが明らかとなった。一方、団体内統合宛名システムでは、41団体が補助金が大きく不足と回答し、財源不足に悩む姿が浮き彫りとなった。

補助金不足は自治体固有の事情か

大山 幸信氏
大山 幸信氏
神奈川県 政策局情報企画部 IT推進担当課長
原田 智氏
原田 智氏
京都府 政策企画部 情報技術専門監
寺尾 勇氏
寺尾 勇氏
秋田県 企画振興部情報企画課 ICT戦略推進監

 福祉関係システムについては、補助金が大幅に不足と答えた自治体が状況を説明した。神奈川県の大山幸信IT推進担当課長は「既存システムのベンダーと共同で概略フローを書いて一次見積もりをもらったが、補助金では足りない」という。

 京都府の原田智情報技術専門監は、「これまでスタンドアロンに近い運用だったが、ネットワーク接続が必須となった。仮想基盤でつなぐのか、専用のネットワークを作りファイアウォールなどを設置するのか、整理しなければならない。どちらにしても、本体の改修費以外の部分に相当なコストがかかる。基盤整備まで含めて考えると、補助金ではとても足りない」と説明した。

 これに対し厚生労働省の鯨井佳則情報政策担当参事官は、「福祉関係では補助金不足で困っている話は聞いていない。オープン化対応の経費など、自治体固有の理由によるケースが多いのではないか。想定事業費を上回る原因が一般的かどうかが問題だ」と指摘した。

 秋田県の寺尾勇ICT戦略推進監は、「想定事業費はシステム仕様が明らかになる前に概算しているように見える」と質問。鯨井氏は「4省庁合同の調査で回帰分析を行い算出した。人口規模だけでなく、パッケージか否かなどシステム形態も考慮して傾斜配分した」と説明した。