NTT持ち株会社が掲げるグローバルクラウド戦略において、NTTドコモの存在感は薄い。2014年4月には、インドのタタ・テレサービシズの保有株式を売却するとも発表した。NTTドコモは今後、どのようなグローバル展開を描いているのだろうか。同社の国際事業部で事業部長を務める高原幸一氏(写真1)に今後の戦略を聞いた。

(聞き手は榊原 康=日経コミュニケーション


写真1●NTTドコモ 国際事業部 事業部長の高原幸一氏
写真1●NTTドコモ 国際事業部 事業部長の高原幸一氏
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今後のグローバル展開をどう考えているのか。

 主に三つの柱で考えている。一つめは、ローミングの高度化。LTEのローミングアウトの対地を拡大していく。3Gと違い、LTEの場合は接続先の通信事業者と技術的なやり取りが必要になる。海外でも一定の速度で通信できるように積極的に取り組んでいく。

 二つめは、BtoBの領域への進出。海外で手掛けるクラウドサービスはないが、M2Mの分野ではNTTグループで連携したクロスセルを展開できる。これまでにない柱で、北米やアジアに基盤を作れないかと考えている。

 三つめは、これまでと同様、BtoCの領域になる。具体的には、コンテンツの販売やEコマース向けプラットフォームの提供、通信事業者への投資などが考えられるが、通信事業者への投資は良い案件がなかなかない。まずはネット・モバイル(ドイツ)やボンジョルノ(イタリア)をしっかりと立ち上げていく。ただ、この領域をさらに拡大していくというよりは、むしろBtoBの領域に注力して取り組んでいきたい。

通信事業者への投資意欲はどの程度あるのか。

 マイノリティ投資はないと思う。マジョリティ投資は考えているが、価格を含め、妥当な案件がなかなかない。

「マイノリティ投資はない」という理由は。

 やはり、過去の経験を踏まえると、マジョリティ投資で経営権を握り、我々の経営方針をしっかり反映できる体制でなければ厳しい。BtoCに入るなら通信事業者にマジョリティ投資するのが本来の正攻法と言える。ただ、下位レイヤーに投資して一国の小さな部分を狙うよりは、例えばアジア全域などで顧客のニーズが高い上位レイヤーの機能やサービスに投資していくような方向感が強い。

ネット・モバイルやボンジョルノは好調なのか。

 売上高や営業利益の数値は非開示としている。出資した当時に比べ、スマートフォンへのシフトが進んで状況は大きく変わったが、事業はそれなりに進捗している。BtoCのノウハウをためていきたいと考えているが、大きく伸びるかといえば、OTT(Over The Top)との競争もあるので難しい面があるかもしれない。2013年8月に買収を発表したオーストリアのファイントレードは課金プラットフォームを保有しており、これから拡大していくと期待している。