企業ユーザーがシステム導入時にクラウドの採用を優先する「クラウドファースト」が加速する中、IT業界では、SI(システムインテグレーション)から、CI(クラウドインテグレーション)へシフトする動きが進んでいる。

 IT業界では、SIにより個別に合意した仕様要件に基づき、企業向けのシステムを受託開発・構築することで収益を獲得している。収益構造は、システムの受託開発や構築、運用保守費用などを工数を対価として受け取り、収益を得るのが一般的となっている。ユーザー企業から受託を受けた元請けベンダーは下請けベンダーや孫請けベンダーに発注するという、多重下請け構造を採ることが多い。

 近年、みずほ銀行や日本郵政などの大型システムの更改や統合、政府の社会保障と税の共通番号「マイナンバー」のシステム構築などで、エンジニアが数十万人不足している。この問題は「2015年問題」としてクローズアップされている。さらに、2020年に予定されている東京オリンピック・パラリンピックの開催を控え、当面は日本国内で大型SI案件が続くとみられている。

 こうした中、クラウドによるサービス型ビジネスの普及により、従来の製造型のSIビジネスには大きな転換が求められている。クラウドによるサービス型ビジネスの収益構造は、開発や構築時に多くの収益を上げるものではない。サービスの価値を対価とした定額課金や利用分に応じた従量課金というように、長期継続的な収益を確保するモデルである。

SI事業からCI事業への転換

 調査会社の矢野経済研究所は2014年7月23日に「クラウド基盤サービス(IaaS/PaaS)市場に関する調査結果 2014」を公表した。この調査結果によると、クラウド基盤サービス市場の成長の背景には、クラウド基盤サービス提供事業者とユーザー企業の仲介や、企業ユーザーの導入や運用を支援する「クラウドインテグレーター」や「クラウドブローカー」の存在があるという。こうした事業者の動きが活発化し、エコシステムが形成され始めた。この結果、これまで以上に企業ユーザーがクラウド基盤を利用しやすい環境が整いつつある。

 中長期的にはクラウドサービスの普及に伴い、SI案件が減少する。この結果、中堅中小SI事業者は下請け案件数の減少や構築単価の減少傾向に見舞われ、システム構築運用案件そのものの減少が進むと予想される。