本連載では、「クラウドファースト」の浸透という動きを題材に、クラウドインテグレーターの台頭、加熱するクラウド事業者間の競争、協調型のクラウド事業モデルの展開、OpenStackを中心としたオープンクラウドの進展まで、多様な角度からエンタープライズクラウドの動向を解説してきた。
最終回の今回は、これまでの状況を踏まえ、2015年のクラウドビジネスの今後を占う。推測される傾向としては
- クラウドネイティブの進行
- クラウドプロフェッショナルサービスの台頭
- 複数の主要クラウド事業者の相互接続が加速
- サービスの競争軸は広範囲なレイヤーに拡大
- 産業に特化したクラウドソリューションの展開
などがある。順に見ていこう。
2015年はクラウドネイティブ時代の幕開けに
クラウドファーストが一般化しつつある中、第1回で紹介したように基幹システムの基盤にクラウドを採用する動きが広がった。中でもクラウドERPの導入が顕著になってきた。ユーザー企業は今後も、業務アプリケーションをクラウドへ移行する動きを進めるだろう。
米調査会社のフォレスターコンサルティングがIT部門およびビジネス部門の意思決定者300人に対し2014年11月に実施したIT利用調査によると、81%がミッションクリティカルなアプリケーションをクラウドに移行済み、もしくは2年以内にクラウドへ移行すると回答した。
ただし、アプリケーションによっては、ライセンスやパフォーマンスの問題などで、クラウドに移行が困難な場合もある。こうした問題に対処するため、業務アプリケーションをオンプレミスからクラウドへマイグレーションする際に、実装までを含む最も効率のよい技法(ベストプラクティス)を探る動きがある。
米アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)はこれまで、自社のクラウドサービスをベースとしたクラウド設計のベストプラクティスとなる「クラウドデザインパターン」を公開してきた。2015年からは、パートナーのアプリケーションを実装したソリューションパターンである「エコシステム ソリューション パターン」も積極的に公開し、パートナーの提供するアプリケーションとの連携を強化するという。