企業に「クラウドファースト」が広がる中、アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)、米マイクロソフトなどのクラウドサービス事業者各社は、クラウドインテグレータなどのプレーヤーとの連携強化や事業モデルを拡大することで、サービスの競争力を高めている。

 クラウドサービスがコモディティ化したことにより、クラウドサービス事業者は大手でさえも、自社のサービスだけでは差異化が困難になってきた。自社のクラウドサービスだけでなく、アプリケーションのほかセキュリティや運用保守など、クラウドの周辺にある事業者との連携や協調によってWin-Winの関係を形成。差異化や付加価値提供によって事業拡大を図る。今回はこの「協調型」のクラウド事業モデルを、それぞれのプレーヤーの役割を分解しながら解説してみよう。

クラウド業界におけるプレーヤーを八つに分類

 まず、クラウド業界を取り巻く事業者の位置付けを分解してみよう。

 米国立標準技術研究所(NIST)クラウド・コンピューティングが作成したリファレンス・アーキテクチャー、「NIST SP500-292」が提示しているアクターモデルなどを参考に、クラウドを構成するそれぞれの役割を細分化してみた。複数の役割を兼ねている事業者もあるが、機能で見ると「コンシューマ」「プロバイダ」「オーディタ」「ブローカ」「キャリア」「コミュニティ」「インテグレータ」「イネーブラ」の八つに分類できる()。

表1●クラウド事業での各プレイヤーの相関
プレーヤ役割
クラウドコンシューマクラウドサービスの利用者、および組織に属する管理者
クラウドプロバイダクラウドサービスを提供する事業者および組織
クラウドオーディタクラウドサービスの運用やパフォーマンス、セキュリティなどのアセスメント(評価)を第三者機関として Cloud Consumerに提供する組織
クラウドブローカクラウドサービスの管理や、Cloud ConsumerとCloudService Provider間の契約締結の仲介事業者
クラウドキャリアクラウドサービスの利用に必要なネットワークを提供する事業者
クラウドコミュニティ特定のクラウドサービスや技術の利用者が中心の情報交換を主目的とした組織やコミュニティ
クラウドインテグレータクラウドサービスの導入支援を行う事業者
クラウドイネーブラクラウドサービス基盤を構築するために必要なIT 製品およびサービスの提供者

 クラウド事業者が各プレーヤーと連携・協調し、事業を拡大していくためのステップを、企業がクラウドを利用するフェーズに分解しながら整理してみよう。