業務用の安定した無線LANネットワークを構築するために注意すべき点がある。企業用途の無線LANでは、一般的にいわれる“無線LANの常識”とは異なる対応が有効となるケースがあるという点だ。最たるものは「電波がよく飛ぶ、高速なAPが最適とは限らない」である。

 このことを理解する前提として、スループットについて解説しよう。APでは、規格上の最大スループットが注目されがちだ。ただし、実運用において得られるスループットは期待通りになるとは限らない。以下に、高いスループットが出ない要因を4つ挙げる。

 まず1つめは、距離が遠くなると遅くなる点だ(図1)。無線LANの電波が届いたとしても、最大スループットで通信できるわけではない。APと端末の距離が離れるほど、スループットは低くなる。また無線LANの通信は、APから端末への下り通信と、その逆の上り通信がある。そのため、APが発する電波が強ければよいというわけではない。端末が発する電波もAPに届かないと、適切な通信はできない。

図1●電波強度と通信速度の関係
図1●電波強度と通信速度の関係
APと端末の距離が離れて電波強度が落ちるほど、スループットが下がる。なお上りと下りでは距離と電波強度の関係が異なるケースがあるので注意。
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