従業員数50人程度までの中小企業オフィス向けの無線LAN構築において考慮しなければならない点を解説する本特集。今回は、まず中小規模ネットワークを取り巻く環境を整理する。そこから、使い方に合ったAPの選び方を解説する。

端末の変化で普及が進む

 現在、企業向けのAPが注目され、無線LAN関連の市場が活性化している。これは、スマートデバイスの登場というユーザー側の変化が起こったからである。スマートデバイスの多くは無線LAN機能を標準搭載する一方、有線LAN機能はない。そのため、環境整備としてAPの導入が進められているのだ。

 スマートデバイスはパソコンと携帯電話が融合した機器で、直感的に操作できる。このため、ユーザー側に求められるICTリテラシーは下がり、様々なビジネスの現場でICT化を進める原動力となっている。

 無線LANの仕様や端末の充実も、活性化につながっている。仕様面ではIEEE 802.11nが普及、実効スループットは100Mビット/秒の有線LANと同等になり、快適に業務をこなせるようになった。また、混雑する2.4GHz帯に加えて、比較的空いている5GHz帯にも対応した端末が増加中だ。

LAN構築の悩みや課題

 現状認識として、企業のLAN(ネットワーク)が抱えている課題を整理しよう。図1は、調査会社IDC Japanによる調査結果で「従業員規模別LANに関する最も重大な課題、改善点」を聞いたものである。まず「配線の複雑化と老朽化」「ケーブルループ接続障害」といった回答が上位に来ている点に注目したい。全体的にLANへの投資が滞っていて、再構築が課題になっている現状がうかがえる。配線の複雑化と老朽化は、有線LANの課題だ。これらの解決策として、無線LANの導入は選択肢となる。また無線LANは、ループ接続障害を減らす効果も期待できる。

図1●LANの課題
図1●LANの課題
無線LANの導入は、有線LANのいくつかの課題の解決策として期待できる。一方で、有線LANとの運用管理システムの統合や、無線LAN自体の運用管理が課題となっている状況がうかがえる。
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 その一方で、無線LANに関連した課題も挙がっている。「有線/無線LANの運用管理システムの統合」そして「無線LANの運用管理」である。無線LANの導入に際しては、これらの課題を引きずらないようにする必要があるだろう。