これまでは、既存の基幹系システムをクラウドに移行する方法を見てきた。このパートでは、クラウドだから実現できた機能を持つ基幹系の事例を紹介する。福岡県を中心に店舗展開するスーパーマーケット、西鉄ストアがHadoopとAWSを使って構築した会計システムである。

写真1●西鉄ストア 情報システム部 濱田孝洋氏
写真1●西鉄ストア 情報システム部 濱田孝洋氏
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 西鉄ストアが構築した会計システムは独自の特殊な機能を持つ。一般的なやり方より正確に利益を計算できる「個別原価法」という方法を用いて利益を算出する。具体的には、いくらで仕入れた商品が、いくらで売れたかを商品種ごとに管理するものだ。こう書くと簡単そうだが、1万5000品目の商品を扱う西鉄ストアで、この処理をするのは大変である。仕入れ値、売値、在庫数は毎日変動するので、全商品のこれらのデータを毎日洗い替えして計算することになるからだ。

 このように個別原価法は計算量が膨大になるため「どの小売業もやりたいと思っていたが、事実上無理だった。当社が全国で初めてのはず」(西鉄ストア 情報システム部 濱田孝洋氏、写真1)。ちなみに一般の小売業では、より簡易な方法で利益を類推している。

 西鉄ストアはこの先進的な基幹系システムを、クラウドを使うことで実現した。しかし、その道のりは平坦ではなかった(図1)。プロジェクトチームが直面する壁をどのように乗り越えていったかを見てみよう。

図1●西鉄ストアが基幹系システムをクラウド化する際に直面した三つの壁
図1●西鉄ストアが基幹系システムをクラウド化する際に直面した三つの壁
Hadoopの利用、AWSへの移行、AWSのクセや特徴に合わせた開発、によって乗り越えた
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