基幹系システムをクラウド(ここではIaaSを想定)に移行する際の手順を解説。クラウド化するメリットを厳密に検証し、システムのアーキテクチャーを再設計する。オンプレミスでは実現不可能だった、次世代の基幹系システムを手に入れよう。

 基幹系システムをIaaSに移行する際には、大きく「計画フェーズ」「設計フェーズ」「構築・運用フェーズ」に分けて考えるのがよい()。

図●クラウドに移行する際の手順
図●クラウドに移行する際の手順
計画・設計・構築・運用のフェーズに分けて考える
[画像のクリックで拡大表示]

計画フェーズ クラウド化するメリットを明確にする

 基幹系システムをクラウドに移行するに当たって、成否を握るのがこの計画フェーズだ。通常のプロジェクト同様、最初に目標設定を行う。当然だが「基幹系システムをクラウドに移行する」ことは目標ではない。システム維持コストを下げたい、ハードウエアから解放されたい、など明確な目標を利害関係者に周知する。メリットを得るにはリスクを取ることも必要だ。そうしなければ、単なるデータセンターの引っ越しになりかねない。

 目標が周知されたら、次の三つのタスクを同時に進める。どのシステムをクラウドに移行するかを検討する「クラウド移行対象の見極め」、クラウドベンダーを決める「クラウドの選定」、コスト面で見合うかを検討する「ROI(投資対効果)算出」である。同時に進めるのは、これらが相互に関連しあっているからである。

 「クラウド移行対象の見極め」では、ユーザビリティー、技術面、組織面、財務面、リスクという五つの観点で、該当システムのクラウド化によるメリットとデメリットを整理する。例えば組織面では、クラウド化により不要になるチームはどこか、新たに必要になるスキルは何か、などを考える。