筆者は、本連載でも触れている通り、2012年に発売された米アップルの「MacBook Pro 15インチRetinaディスプレイモデル」(写真)を4年以上にわたって使用してきた。

写真●筆者の「MacBook Pro」
写真●筆者の「MacBook Pro」
(撮影:松村 太郎)
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 使い始めてから3年が過ぎた昨年、そろそろマシンを買い換えようと考えたが、思いとどまることになった。理由は、当時の最新OSである「OS X El Capitan」(関連記事)を導入した筆者のMacBookは、パフォーマンスが見違えるように向上したからだ。

 同OSは、アプリの実行などに関しての高速化をうたっていたが、古いマシンで体感できるほどに、如実にもたつきがなくなるとは思わなかった。「何だか遅いなあ」という漠然とした買い換えの動機は吹き飛び、「まだまだ現役で使える」と見直した。

コンピュータ企業の収益基盤を変えたアップル

 かつてOSは、コンピュータ企業の収益の半分程度を稼ぎ出す主要事業だった。新OSは有償アップデートが当たり前の時代があった。

 しかしアップルの場合、「Mac OS X」「OS X」時代には、新OSを129ドルで販売したが、2009年の「OS X Snow Leopard」で29ドルに大幅値下げ。2012年の「OS X Mountain Lion」でさらに19ドルに値下げし、ついには2013年に「OS X Mavericks」を無料化した。

 そして、OS Xはもう一つの“常識”を変えた。新OSの登場は、多くの場合、コンピュータのハードウエアに対してより高い処理性能や多くのメモリー容量などを要求する。そのため、新OSの登場は、OSそのものの販売に加えて、PC本体の買い換え需要喚起も期待される一大イベントとなっていた。

 しかし、2015年に無料で配信されたOS X El Capitanは、導入によって、筆者の環境では多くのアプリ起動や様々な動作のもたつきが改善されたのだ。新OSがより軽快に動作するとは……。こうして、OSにまつわる2つの常識が、アップルによって過去のものになった。