「iOS 10」などが披露された世界開発者会議「WWDC 2016」(関連記事:開発者に変化を迫るiOS 10、「アプリ体験の細分化」が鍵)。ここで、米アップルが使った新たな言葉に「Differential Privacy」がある(写真)。

写真●「WWDC 2016」で新たに登場した「Differential Privacy」という言葉
写真●「WWDC 2016」で新たに登場した「Differential Privacy」という言葉
(撮影:松村 太郎)
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 Differentialは英和辞書では「差別の」「特性を示す」「微分の」と訳される。高校時代、自動車部に所属していた筆者は、「ディファレンシャルギア」「デフ」という言い方に親しんでいた。

 アップルがDifferential Privacyで言おうとしていることを要約するとこうなる。

 コンピューティング体験をより向上するために、機械学習を利用する。しかし他社とは違って、ユーザーのプライバシーを守ることを優先したい。そのため、(他社がやっているように)ユーザーのクラウドに蓄積しているデータを利用するのではなく、個人のデータにあえてノイズを加えて、寄せ集めて解析し、活用する……。

「確実な匿名性保つ」

 アップルでソフトウェアエンジニアリングを担当する上級副社長、クレイグ・フェデリギ氏は、WWDC 2016の基調講演の場で、次のように述べている。

 「ソフトウエアをスマートにするために、複数のユーザーのデバイス利用パターンのデータを利用することが必要。Differential Privacyは、統計学・データ分析の分野の研究課題であり、確実な匿名性を保って個人情報を解析できるようにする」。

 ここで興味深いのは「研究課題」という言葉だ。つまり、理論的に確立されたものではなく、研究途上の技術を試そう、という話である。大量のユーザーデータが必要であることから取り組みにくかった、とも解釈できる。