SAPは詳しいライセンス体系を明らかにしていないが、「ソフトのユーザー数で決まる」という料金体系に近いとされる。

 具体的には、システムへのアクセス権限に応じて「ロール」が分かれ、ロールごとにライセンス料が異なる。ロールには「Developer」(開発者)や「Professional」(開発以外のすべての機能を利用)、「Limited Professional」(Professionalよりも限定された機能を利用)、「Employee」(参照など定型的操作のみ)などがある。ユーザー企業はどのロールに当てはまる従業員が何人いるかを想定して、ライセンスを購入する。

 このライセンス体系で生じる無駄は「権限の高いロールを購入しすぎている企業が多い。特に日本企業では全ユーザーをProfessionalで購入している例が少なくない」(ライセンス管理ソフトのフレクセラ・ソフトウェア 営業部 セールス・エンジニアの兒玉隆二氏)というもの。本来はEmployeeやLimited Professionalで十分なのに、高額なProfessionalを購入しているのだ。

 こうした無駄をなくすには、SAP ERPの利用状況を把握する必要がある。そのためのツールとして、米Flexera Softwareの「FlexNet Manager for SAP Applications」などがある(図8)。このツールはライセンス管理ソフトで、購入済みのライセンスやその購入価格、実際の割り当て状況などを可視化する。加えて、SAP ERPサーバーへのログイン時間やトランザクションのログをユーザーごとに集計して、利用状況から算出した最適なライセンスを提示する。

図8●「FlexNet Manager for SAP Applications」の画面
図8●「FlexNet Manager for SAP Applications」の画面
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 兒玉氏は「試用期間に利用すれば、最適なライセンス購入に役立つ。既存システムで無駄なライセンスを見つけたら、それをプールして、新しいシステムの構築時にライセンスを使い回せる」と言う。