二つめの追い風は、日本の各省庁が民間企業の海外案件受注を後押しする動きを本格化させていることだ。政府高官によるトップセールスや、民間企業を帯同させる経済ミッションが代表的である。日本企業のインフラ輸出支援を目的とした関係閣僚による「経協インフラ戦略会議」の資料によると、2012年の総理・閣僚によるトップセールスは25件だったが、2013年は2.7倍の67件に増えた。

 かつて、テレビの地デジ方式を16カ国に売り込んだ総務省は、それを成功モデルとして、ICT分野全体でのトップセールスに力を注ぐ。既にASEAN各国とICT領域での協力関係を築き、民間企業の案件受注に向けた地ならしを進めている(図4)。

図1●総務省トップセールスと国土交通省の 「防災協働対話」の主な成果とIT市場
意欲的にASEANを訪問し、地ならしを進める
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 富士通の笠間慶文公共営業本部官庁プロジェクト営業部シニアマネージャーは、「政府主催のイベントでは、相手国の要人に会える」と、そのメリットを語る。新興国はトップダウンの文化が根強いため、トップと直接商談できる機会は貴重だ。

 富士通は、国土交通省が主催した「防災協働対話」の場で手応えをつかんだ。2014年3月にベトナムで開催した同イベントでは、センサー情報を集約して、洪水時に迅速な対応が取れるようにする河川管理ソリューションの概要を説明をした。「国交省を通じて、ベトナム側の評価は上々と聞いている」(笠間シニアマネージャー)。