エネルギーや鉄道といった領域が主役だった官民連合が、ICT領域でも活発化し、成果を上げ始めた。
制度設計や人材育成とセットにした“パッケージ輸出”が成功しつつあり、トップセールスやODA活用も盛んになってきた。
官民一体となって、アジアを中心とした海外のインフラ需要を取り込む――。2010年、民主党政権が企業のグローバル化支援を表明して以降進んできた、官民連合による新興市場開拓が、さらに加速している。
これまで、アジア新興国向けのICT輸出で先行してきたのは韓国だ。2004~2005年頃から電子政府関連システムを売り込み、モンゴルやカンボジアをはじめ、マレーシアやインドネシアの一部でも導入したという。カンボジアやラオスの証券取引所には韓国取引所(KRX)が出資し、システムも韓国製だ。
ところが風向きは変わり始めている。ここ2~3年、官民連合によってICT輸出に成功する事例が日本で増えてきた(表)。野村総合研究所(NRI)の桑津浩太郎コンサルティング事業本部主席コンサルタントは、「東南アジアでは互角に勝負できるようになってきた」と評する。その背景には国内外での環境変化がある。
桑津氏は、「韓国はシステムを小さくまとめて、手離れよく導入する。日本はしっかりした基盤で、どんなアプリケーションにも対応できるシステムを目指す」と両者の違いを指摘する。安価かつ短期間で使い始められるシステムは新興国にとって魅力的で、今までは韓国の手法が奏功してきた。