ヤンゴン証券取引所の開業に向けては、システム構築だけでなく、日本政府が法令の策定支援に、日本取引所グループ(JPX)や大和総研が制度設計支援に深く入り込んでいる。

 証券取引所を開業するには、証券取引法が必要だ。さらに、株式の売買条件や上場規則といった取引所運営のための制度が整って初めて、取引システムが機能する。立ち遅れていたミャンマーの取引所開設に当たり、法制度の整備に日本が関わることで、取引システムの構築も日本へ、という流れが出来上がる。官民連合の意義はここだ(図1)。

図1●ヤンゴン証券取引所設立に向けた体制
図1●ヤンゴン証券取引所設立に向けた体制
2015年の開業を目指す
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 ではなぜ、法制度の整備にまで日本は入り込めたのか。それは、早くに始めたアプローチを連綿と続けてきたからだ。

 始まりは、ミャンマーがまだ軍事政権下にあった2010年頃。外資企業がほとんどいない中、現地ビジネスを15年にわたり継続していた大和総研に、ミャンマー側から証券取引所開設の相談が舞い込んだ。

 同じ頃、財務省財務総合政策研究所(財務総研)はアジア新興国の証券取引所の設立を支援するプロジェクトを発足させ、支援先を選定中だった。2011年初頭、大和総研経由の情報もあり、民生移管直後に当たる2011年5月には実現性の検証を進め、方針を固めた。諸外国が熱視線を送る以前から準備を進めていたわけだ。