ASEAN経済共同体(AEC)の発足で、一大経済圏が誕生する予定の2015年。ミャンマーの金融インフラもまた、節目の年を迎える。ミャンマー中央銀行(CBM)が、日本の「日銀ネット」に当たる基幹系システムを初めて導入。さらに同年、ヤンゴン証券取引所が開業し、取引システムをはじめ、証券会社の注文・決済システムなどが稼働する見込みだ。

 国家の中枢となる金融インフラのシステム化を担うのは、日本のITベンダーである。CBMの基幹系システムは、アプリケーション開発をNTTデータ、インフラ構築などを大和総研と富士通、KDDIなどが受注した。「東南アジアの金融関連システムを日本が作るのは初めて」。大和総研の伊藤慶昭クラウドサービス部長は、こう話す。ヤンゴン証券取引所の取引システムなどの開発についても、大和総研が主体となる公算が高い。

官民連合の成功モデル

 2011年に民政移管し、“アジア最後のフロンティア”と注目を集めるミャンマーには、かつてない規模の海外投資が集まる。国内企業の資金需要も高まる見込みである。

 ところが、金融関連システムの整備の遅れは深刻だ。その象徴がCBMだった。本支店間及びCBMと市中銀行間の資金決済などのほとんどが手作業で、1日当たりの処理件数は500件が限界だ。国際協力機構(JICA)の押切康志専門家は、「1500人の行員のうち、システム担当者はわずか14人」と証言する。

 ミャンマー政府やCBMが、日本のITベンダーを伴走者に選んだのは偶然ではない。官民連合によるアプローチの賜物である。