2020年の五輪開催を契機とした、新しいまちづくりの取り組みが始まっている東京。どのような問題があり、どのように解決していくべきなのか。日経BP社のクリーンテック研究所、インフラ総合研究所 、イノベーションICT研究所の3人の所長が座談会で、それぞれの意見をぶつけ合った(座談会は今年4月23日に実施、肩書は当時のものです)。

東京オリンピック・パラリンピックの2020年開催が決まり、東京では五輪を契機とした新しいまちづくりの取り組みが始まっている。新ビジネスの可能性も期待されているが、現状をどのように捉えているのか。

日経BPクリーンテック研究所 所長 望月 洋介氏
日経BPクリーンテック研究所 所長 望月 洋介氏
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宮嵜清志 市民生活では安全・安心が何より優先される。その観点から考えるなら、老朽化が加速度的に進む都市インフラを、2020年とさらにその先を見据えて、どう維持補修していくかが課題になると考えている。一方では、建設業界への就業者数は技能労働者を中心に減少が進み、高齢化も進行している。五輪開催までの期間は、日本を支えてきたインフラの維持補修、管理を今後どうするのか、根本から考え直す良い機会になると考えている。課題が多いということはビジネスの可能性も大きいということだ。インフラ維持補修の未来のモデルを日本が世界に示すチャンスでもある。

望月洋介 「日本の将来推計人口」によると日本の全人口は2020年に約300万人減少するが、東京都の人口は約1335万人とピークを迎え、その後は東京でも人口減少に転じていくと予測されている。インフラには、人口増加や拡大を前提とした開発思想からのパラダイムシフトが求められていて、東京の人口がピークに達するまでの間にやるべき対策は枚挙に暇がない。

 例えば、国交省は「インフラ長寿命化基本計画」で、2020年までに国内の重要インフラの約20%にICT、センサーやロボットを積極的に導入して維持補修を行う方向性を定めた。さらにその後の10年で一気に100%に引き上げる計画だ。つまり政策的には、2020年までにインフラ長寿命化のための新技術の開発・導入の標準モデルをつくろうとしているわけで、この標準モデルの仕様に入れなかった企業は、以後は完全に蚊帳の外になるということだ。