前回に引き続き、首都直下型地震対策検討ワーキンググループの委員を務める橋本孝之日本IBM会長に、企業のBCPと新しいまちづくりのポイントを聞いた。(聞き手は日経BPイノベーションICT研究所長 桔梗原 富夫)

防災について考える場合に、第一に想定しているのは地震なのでしょうか。

(撮影:清水真帆呂)
(撮影:清水真帆呂)

 今はそうだと思います。多くの学者が研究していますが、現状では明日の何時に地震が起きるかまで予知するのは不可能です。ですから被害想定に基づいて減災の仕方を考えるしかありません。過去の被害を分析し、現在にあてはめてコンピュータを使ってシミュレーションする。それによって被害を想定し、備えるわけです。

 しかし、エンタープライズ・リスク・マネジメントの観点からいうと、地震だけではなく、自然災害であれば台風や竜巻などもあるし、ほかにインフルエンザやサイバー攻撃だってあるでしょう。だから、様々なことを想定しておく必要があります。

 BCPを策定する上では、原因事象型と結果事象型とがあります。原因事象型というのはリスクの原因ごとに計画を策定します。例えば、地震であっても、夏の雨が降っているケースと、冬の夕方の風の強い日に起きたケースとでは対策が違う。原因ごとにシナリオを考えるというやり方です。

 一方、結果事象型というのは、原因は様々でも、オフィスが使えなくなる、従業員が出社できなくなる、情報システムが止まってしまうといった結果に着目して計画を立てるやり方です。以前は原因事象型が割と多かったのですが、今は結果事象型で備えることが増えています。

東日本大震災の後、震災時の自動車の動きなどビッグデータを分析し、渋滞のメカニズムを解明したりする取り組みもありました。

 そうですね。クラウドやビッグデータ、ソーシャルネットワークなどICTの活躍の場はたくさんあります。

 今、東北大学と産官学が協力して進めているのは、震災アーカイビングです。東日本大震災というのはデジタル化が進んで最初に起きた大災害です。将来のために、画像や映像、音声などをアーカイブし、時系列に並べて再現できる仕組みを構築しています。将来は国会図書館経由で全世界に発信できるようにしようという構想もあります。