電波時計は、東日本と西日本の2カ所にある送信所から送られている電波に乗せられた「タイムコード」を認識して時間を合わせています。正確な時刻が得られるので重宝しますが、電波を使うので、地下室やコンクリートに囲まれた部屋の中などでは、電波が届かずに時間が合わないことがよくあります。
災害の影響などで、電波が来なくなることもあります。東日本大震災のときには、東日本の送信所が東京電力福島第一原発の20キロ圏内にあったため、約40日間電波の送信が停止していました。
そこで本記事では、自宅内に置いたRaspberry Pi(ラズパイ)から、基準時刻の電波を発信してみます(写真1)。送信所からの電波が届かない所でも、Raspberry Piがあれば正確な時刻に電波時計を合わせられます。電子工作で電波を飛ばす基本も学べます。
必要な部品はLED、抵抗、トランジスタ、ビニール線だけです。試行錯誤の過程を詳しく解説していきますが、最終的に作る回路はとても簡単です。またRaspberry Piは今回、旧モデルBを使っていますが、新モデルB+でも大丈夫です。
Raspberry Piによる工作に入る前に、まずは電波時計の仕組みを押さえておきましょう。冒頭に述べたように、電波時計は日本に2カ所ある「標準周波数局」と呼ばれる送信所の電波を受信して時刻を合わせています。送信所は、福島県大鷹鳥谷山(東日本)と佐賀県羽金山(西日本)にあります。
電波の周波数は東日本が40kHz、西日本が60kHzになっています。電波のことを少しご存知なら、この周波数が極めて低いということに気付くでしょう。500kHz台からの中波(AM)ラジオよりもずっと低く、長波に分類できる電波になります。長波は波長が非常に長いため、建物などに邪魔されることが少なく、到達距離が長いという特徴があります。
そんな電波に時刻の情報を乗せているわけですが、40kHzまたは60kHzの電波をオン、オフすることによってデジタルデータとして時刻情報を送信しています。