安全を維持し、安心して暮らせる街。そうした街づくりにおいて役立つICTに、地理情報システム(GIS:Geographic Information System)がある。上下水道などインフラの管理、災害対応、そして健康・医療まで幅広い領域で活用されている。
GISは地図と位置、そして位置にひも付いた情報を管理するシステムである。例えば地方自治体は、都市計画データ、固定資産台帳、上下水道、福祉情報などの様々な地域情報を、それぞれGISと連携させて利用している。連携させることで、例えば土地の区画、要支援者に当たる住民の分布といった地域の情報を、地図上で視覚的にとらえられる。
これらの仕組みの中には、街の安心・安全を確保するために役立つものが少なくない。国内のある自治体が利用している庁内向けGISを例に、仕組みを紹介しよう。都市計画情報、固定資産税帳、道路台帳、上下水道など各システムとGISを連携させた、統合型GISである。
要支援者の災害時避難を支援
統合型GISでは、区画情報や道路の幅員などの情報を、街の白地図情報に重ねて表示できる。さらに、情報を検索して、該当する場所を地図上に表示させるといったことも可能である。
この仕組みが役立つ用途の一つが、最近話題に上ることが多い老朽化インフラへの対応だ。老朽化というと道路や橋梁、ビルに関する話題が多いが、自治体が管理する代表的なインフラとして上下水道がある。
上下水道の管理システムには、例えば敷設した時期や担当した業者といった情報が含まれている。これをGISと連動させた場合、「敷設後30年以上経過している下水道」などの条件で情報を整理すれば、老朽化インフラのマップが出来上がる(図1)。そのうえで、登録された敷設時期の情報に基づいて、GISが自動的に色分けして表示するといったことができる。これなら、補修を優先させるべき部分について、常に最新の情報を把握できる。